早期経営改善計画の流れと必要書類【令和8年版】

早期経営改善計画の流れと必要書類【令和8年版】 経営コラム

早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業。中小企業庁の案内では「Vアップ事業」とも表記)の手続きは、金融機関の事前相談書の取得、協議会への利用申請、計画策定、計画案の協議会への提出、金融機関への提出、計画策定支援費用の支払申請、伴走支援、伴走支援費用の支払申請の順に進みます。伴走支援は計画策定後最初の決算時から3年間、決算期を含め年最低2回が必須です(令和8年3月31日改訂の手引き・マニュアル・FAQ Ver.8.1による)。

早期経営改善計画策定支援とは

早期経営改善計画策定支援とは、中小企業・小規模事業者が認定経営革新等支援機関の支援を受けて資金繰り計画や採算管理などの基本的な経営改善計画を策定する場合に、計画策定支援費用と伴走支援費用の3分の2(上限80万円)を、中小企業活性化協議会(以下「協議会」)が負担する事業です(マニュアル・FAQ 第1、PDF p.8)。条件変更などの金融支援を必要としない計画が対象です。

正式な位置づけは「経営改善計画策定支援事業(早期経営改善計画策定支援)〈バリューアップ支援事業〉」で、令和7年4月1日版から通称が変わっています(改訂履歴、PDF p.2)。この記事は、金融機関を除く認定経営革新等支援機関用のマニュアル・FAQ(令和8年3月31日改訂 Ver.8.1)と、同日改訂の手引きに基づきます。Ver.8.1では対象要件と支援上限が見直されているため、過去の版の解説や、それ以前に申請した案件では、上限額・要件が異なる場合があります。

全体の流れ(10ステップ)

  1. 相談と事前相談書の取得:身近な専門家、金融機関、協議会に相談し、金融機関から事前相談書を取得します。詳しくは事前相談書の記事をご覧ください。
  2. 利用申請:事業者が認定経営革新等支援機関と連名で、協議会へ申請します。
  3. 協議会の確認と通知:協議会が費用負担を適切と判断すると認定経営革新等支援機関へ文書で通知し、同機関は承諾書に記名・押印して提出します。
  4. 計画策定:実務指針に沿って計画を作ります。
  5. 計画案を協議会へ提出:金融機関へ出す前に、必ず協議会へ提出します。
  6. 金融機関への提出:計画を金融機関に提出し、受取書などを受け取ります。
  7. 計画策定支援費用の支払申請:協議会へ支払申請書類を提出します。
  8. 支払決定:協議会が支払決定額と支払予定日を通知し、費用を支払います。
  9. 伴走支援と協議会への報告:計画策定後最初の決算時から3年間、年2回以上の伴走支援を行い、その都度報告します。
  10. 伴走支援費用の支払申請:伴走支援の実施後に申請します。詳細は伴走支援の記事をご覧ください。

時期の面で最初に押さえたいのは、費用の対象は、認定経営革新等支援機関が業務の委嘱に承諾した日以降に発生したものという点です。申請者の自己負担分の支払も、承諾した日以降に行う必要があります(手引き3・5、PDF p.2・p.8)。協議会の通知を受け、同機関が承諾書を提出する前に費用を発生させたり支払ったりすると対象外になりうるため、順序に注意してください。

段階ごとの提出書類

別紙①〜③の様式は、中小企業庁のホームページに掲載されています(Q2-2注1、Q5-1注1、Q6-5注)。

1. 利用申請(協議会へ)

区分書類(様式)形式
申請早期経営改善計画策定支援事業利用申請書(別紙①)、申請者の概要(別紙①-1)、業務別見積明細書(別紙①-2)中小企業庁HP掲載の様式
添付履歴事項全部証明書(個人事業主は開業届または直近の確定申告書の写し)原本(注)
添付認定経営革新等支援機関であることを証する認定通知書等写し
添付認定経営革新等支援機関ごとの見積書及び単価表自由書式
添付申請者の直近3年分の申告書写し
添付金融機関の事前相談書自由書式(原本)

(注)最新の履歴事項全部証明書(概ね3か月程度以内に発行)があり、支援金融機関で原本確認がなされている場合は、写しも可とされています。「直近3年分の申告書」は、法人は法人税、個人は所得税の確定申告書で、決算報告書・勘定科目内訳明細を含みます(Q2-2・Q2-7、PDF p.19〜20)。

提出は持参、郵送、電子メールのいずれでも可能ですが、原本が必要な書類は電子メールでは送れません(Q2-1、PDF p.18)。利用申請時に出せない書類は、原則として申請から1か月以内に提出が必要で、期限までに出さないと本事業は終了となりますが、再度の利用申請は可能とされています(Q2-2注4)。

2. 計画策定支援費用の支払申請(協議会へ)

区分書類(様式)形式
申請経営改善計画策定支援事業費用支払申請書(別紙②)中小企業庁HP掲載の様式
申請早期経営改善計画(別紙②-1)参考書式。同等以上の内容があれば代替可
申請業務別請求明細書(②-2)、従事時間管理表(②-3)、《計画策定支援》実務指針に基づく実施確認表(②-4)同上
添付請求書類(協議会宛)原本
添付計画策定支援の契約書、申請者の費用負担額の支払を示す証憑類(振込受付書など)、金融機関に計画を提出したことが分かる書面(受取書等)写し

(Q5-1、PDF p.29)自己負担分の支払方法は振込のみで、他の費用との合算もできません(Q5-2・Q5-3)。詳しくは補助額と自己負担額の記事をご覧ください。

3. 伴走支援の実施報告と伴走支援費用の支払申請

毎回の実施報告では、伴走支援実施報告書、伴走支援レポート(写し)、《伴走支援》実務指針に基づく実施確認表を協議会へ提出します(Q6-3、PDF p.35)。実施報告は、伴走支援費用の支払申請と同時に行うこともできます。

区分書類(様式)形式
申請伴走支援費用支払申請書(別紙③)原本
申請伴走支援報告書(③-1)同等以上の内容の書面があれば代替可
申請伴走支援業務別請求明細書(③-2)、従事時間管理表(③-3)、《伴走支援》実務指針に基づく実施確認表(③-4)中小企業庁HP掲載の様式
添付請求書類(協議会宛)原本
添付伴走支援の契約書、申請者の費用負担額の支払証憑類写し
添付伴走支援レポートの写し、または報告内容を記録した書面自由書式

(マニュアル Q6-5、PDF p.36)伴走支援を通常の顧問業務の中で行い、別途の料金を設定しない場合は、支払申請額が0円になります。この場合も実績報告は必要ですが、費用関係の書類は不要で、全て電子メール等で提出できます(Q6-3②、Q6-5)。

対象外・注意が必要なケース

ケースマニュアルの記載(Q番号)
法人形態産業競争力強化法第2条第23項の中小企業者と個人事業主が対象。医療法人(常時使用する従業員300人以下)も対象。社会福祉法人、NPO法人、一般社団法人、一般財団法人、学校法人などは対象外です。これら以外にも対象とならない法人形態・業種があるため、個別に協議会へ確認するよう案内されています(Q1-3(1)、PDF p.15)。
創業後の期間創業後12か月以上の営業実績があり、決算を経ていれば対象となります(一事業年度で12か月の決算を実施していることが必要)(Q1-3(8))。
過去の利用歴経営改善計画策定支援事業・早期経営改善計画策定支援事業を利用した者(実施中を含む)や、協議会の収益力改善支援(金融支援あり)、再生支援等を利用した者は対象外。複数回の利用もできません(Q1-3(2)、Q1-5)。
認定経営革新等支援機関との関係議決権保有比率20%以上(間接保有含む)は対象外。同機関(法人の場合はその代表者)が取締役を務める事業者も対象外。監査役・会計参与は20%未満なら対象です(Q1-3(7))。
企業グループ例外を除き、利用申請はグループ全体で1件のみ。上限額もグループ全体で適用されます。株主が生計を一にする親族同士は同一の株主、経営者が生計を一にする親族同士は原則として同一の経営者とみなされます(Q1-7)。
金融支援を含む計画条件変更等の金融支援を含む計画は策定できません。借換融資・新規融資は金融支援に該当せず、織り込めます(Q3-4)。
外部委託外部への委託は不可です(外部委託とは、支援金融機関と、連名で申請している認定経営革新等支援機関以外が業務を行うこと)。他の同機関と連名で申請すれば共同支援は可能ですが、1事業者あたりの補助上限は変わりません(Q2-11・Q2-12)。
他の補助事業との関係他の補助事業で提出を求められる事業計画を作るための利用は不可(本事業で策定した計画の内容を反映させることは可)。同じ支援に複数の補助を受けるのは二重交付で不可です。一方、申請者の自己負担分に自治体の専門家派遣事業などを併用することは可能です(Q2-13①〜③)。

補助率と上限の要点

補助は費用(消費税込み)の3分の2で、費用の種類ごとに計画策定支援は上限50万円、伴走支援は上限30万円(合計上限80万円)です(Q1-1、PDF p.14)。計算は補助額と自己負担額の記事で扱います。このほか、事業承継先の探索や経営者保証の解除を行う場合は、企業概要書作成費用と金融機関交渉費用がそれぞれ上限10万円まで加算されます(Q1-1)。

伴走支援は「1年間」ではなく3年間

伴走支援は計画策定後最初の決算時から3年間、決算期を含め年最低2回が必須で、「原則1年間」ではありません。回数の数え方と報告期限は伴走支援の記事で整理しています。

期限のまとめ

項目期限・目安根拠
計画策定支援費用の支払申請利用申請の受理日から1年以内。過ぎると失効Q2-17、Q9-1、手引き4(2)②
伴走支援の実施報告基準日から極力4か月以内(最大6か月以内)Q6-3
伴走支援費用の支払申請伴走支援対象期間最終日(計画策定後3年を経過した最初の決算日)から6か月を経過した日まで。明確な理由があり協議会が認めれば延長可Q6-8、手引き4(9)②

実務で確認しておきたい点

  • 事前相談書の取得先:メイン行または準メイン行に相談します。無借金の会社でも、決済口座のある金融機関の事前相談書があれば利用できます(Q1-2)。ただし運用上、協議会によっては与信取引(借入)を確認できる資料を求められることがあります。
  • 計画の提出先と順序:事前相談書を受け取った金融機関、または連名で申請した金融機関に提出します(Q2-4)。計画案は、金融機関に出す前に必ず協議会へ提出します(Q3-5)。
  • 伴走支援の回数:必須の回数に加えて、任意の時期の伴走支援を設定することもできます(Q6-7(2))。任意回を計画書や見積にどう書くかは、利用申請先の協議会に確認してください。
  • 利用申請書類のドラフト確認:協議会によっては、利用申請書類の原本を出す前に、ドラフト版をデータで確認したいと求められることがあります。

このうち、与信取引を確認できる資料の求めとドラフト版での事前確認の2点は、協議会ごとの運用に関する一般的な注意で、マニュアルに明記された要件ではありません。一方、計画案を金融機関より先に協議会へ提出することは、マニュアル(Q3-5)に定められた手順です。

当社の支援内容は早期経営改善計画の策定支援のページに掲載しています。

よくある質問

利用申請に期限はありますか?

利用申請そのものに期限はなく、随時受け付けられています(Q9-1)。ただし、受理から1年以内に計画策定支援費用の支払申請をしないと失効します。

顧問税理士が支援する場合、顧問料に含めて請求できますか?

できません。顧問契約の範囲外の業務として別途契約を結び、支払申請時に契約書の写しを提出します。顧問料や決算料での精算は認められません(Q2-10、手引き5)。

伴走支援費用の支払申請に期限はありますか?

あります。伴走支援費用の支払申請の期限は、伴走支援対象期間最終日(計画策定後3年を経過した最初の決算日)から6か月を経過した日です。それまでに支払申請書を提出できないと、利用申請は失効します(Q6-8)。

確認した一次資料

最終確認日: 2026年11月4日

本記事は、公的機関の一次資料を確認した範囲で書いています。確認日以降に資料が改定されている可能性があります。個別の申請可否は、事務局・協議会や専門家にご確認ください。

計算の考え方と出典の扱いについては「数字の扱い方」をご覧ください。