小規模事業者持続化補助金は、採択されても、補助金事務局が出す「交付決定通知書」に書かれた交付決定日より前の発注・契約・支払は補助対象外です。さらに、事業と支払を交付決定日から補助事業実施期限までに終え、実績報告書を期限内に出し、補助金額の確定を受けて初めて補助金が支払われます。「採択=使ってよい」ではありません。
この記事は、第20回公募(一般型 通常枠)・商工会議所地区の公募要領(第8版、2026年7月21日)、交付規程(2026年3月6日改定)、「申請時によくあるご質問(第20回)」(事務局サイト掲載の版、2026年11月4日に確認)に基づいています。商工会地区や、他の回・枠では扱いが異なる可能性があります。
自分の地区の資料を確認する(横浜市の場合)
持続化補助金の事務局は、商工会地区と商工会議所地区で別々です。公募要領の表紙には、商工会地区は株式会社ニューズベース、商工会議所地区は株式会社日本経営データ・センターが事務局と書かれています。今回の交付規程も「商工会議所地区」の事務局が定めたものです。
よくあるご質問では、「商工会地区は主として町村のエリア、商工会議所地区は原則として市のエリア」と説明されています。ただし、同じ質問の回答は「市区町村によっては混在している」とも述べ、本社の所在地ではなく、事業を営む地域で判断するとしています。横浜市内の管轄は、事業を営む場所をもとに商工会議所でご確認ください。商工会地区の事業者は、別の事務局の資料を見る必要があります。
採択から入金までの流れ
よくあるご質問(Q1-1)は、流れを「公募申請、採択、見積書等の提出、交付決定、補助事業の実施、実績報告、確定検査・補助金額の確定、請求、入金」としています。
- 採択(第20回は2027年3月頃の発表予定)
- 経費の価格の妥当性を示す見積書等(相見積を含む)を提出(提出期限は2028年2月29日。期限までに出ないと採択取消し)
- 交付決定(詳細な見積書が速やかに提出された場合でも、採択発表から概ね1〜2か月かかる場合がある。あくまで目安)
- 補助事業の実施(発注・契約・支払は交付決定日から)
- 実績報告書(様式第8)と経理書類の提出
- 確定検査・補助金額の確定
- 精算払請求書(様式第9)で請求、入金
- 事業完了後の事業効果等状況報告
よくある誤解と、資料の記載
| よくある理解 | 資料の記載 |
|---|---|
| 採択発表が出たから、発注してよい | 発注・契約・支出は交付決定日から。採択結果の発表日や採択通知書の日付は、補助事業を始められる日ではない(Q5-2) |
| 契約だけ先にして、支払は交付決定後ならよい | 交付決定前に「発注・契約、購入、支払い(前払い含む)等」を行ったものは対象外 |
| 実施期限に間に合わなければ延長を頼めばよい | 原則として延長はできない(Q5-3) |
| 買ったものは、補助金が入れば自由に売ってよい | 単価50万円(税抜き)以上の機械装置等のほか、外注で作った自社ウェブサイトや店舗改装による不動産の効用増加なども処分制限財産に当たり、一定期間、承認なしに処分できない |
補助事業実施期間と実績報告の期限
交付規程第5条では、事業実施期間は交付決定日から、交付申請書に書いた事業完了予定日までです。公募要領では、第20回受付締切分の実施期間を交付決定日から2028年3月31日まで、実績報告書の提出期限を2028年4月10日としています。
期間の途中で事業が終わった場合(補助対象経費の支払まで含みます)は、完了日から30日を経過した日と、上記の提出期限のうちいずれか早い日までに提出します(交付規程第18条)。期限までに実績報告書が確認できなければ、交付決定は取り消されます。やむを得ない理由があるときに期限を猶予する定めはありますが(同条第3項)、あてにせず計画を組む方が安全です。
なお、賃金引上げ特例・賃金引上げ加点を選ぶと、2028年3月31日より前の実績報告はできません(Q6-1)。
支払方法の制限
公募要領は、補助対象経費の支払方法は銀行振込が大原則としています。主な決まりは次のとおりです。
- 現金:旅費や、現金決済のみの取引(代金引換限定のサービス等)を除き、1取引10万円超(税抜き)の現金支払いは認められません。
- 小切手・手形・相殺:自社振出・他社振出を問わず不可です。売掛金と買掛金の相殺も、資金移動が確認できないため認められません。
- クレジット払い:申請事業者名義で、補助事業期間内に支出が完了しているものに限られます。分割・リボ払いなどは、口座引き落としが期間内に終わっている必要があります。代表者や従業員の個人カードでの支払いは「立替払い」とされ、帳簿等で確認できなければ対象外です。
- ポイント・クーポン・商品券・仮想通貨:これらでの支払いは対象外です。
- 払い戻し・キャッシュバック:購入額の一部または全額を事業者に払い戻す販売方法で、証憑の金額と実質の支払額が一致しないものは対象外です。
- 手数料:振込手数料、代引手数料、インターネットバンキング利用料などは補助対象外です。
現金の決まりは「10万円超」が対象ですが、10万円以下なら自由という意味ではありません。銀行振込が大原則で、補助事業期間内に支出が完了していない経費は対象外です。
残しておく証拠書類
実績報告では、実績報告書(様式第8)、経費支出管理表(参考様式)、支出内訳書、そして経費を支出したことがわかる一連の証憑が求められます(Q1-6)。証憑の例は、見積書、発注書、契約書、納品書、請求書、領収書、預金通帳の該当部分の写しです。補助金額の確定に事務局が必要と判断したものも対象になります。
公募要領は、調達を「仕様提示、見積、発注、納品、検収、請求、支払」の流れで行い、その証拠書類を整理・保存・提出できるようにしておくよう求めています。
- 相見積:発注総額(1件あたり)が税込50万円を超えるものは、2者以上から見積を取り、より安価な先を選びます。同じ発注先に複数の機械装置等を出す場合は合計額で判断します(Q4-12)。事業内容の性質上、見積を取ることが難しい場合は、随意契約の理由書を採択発表後から交付決定までに提出します(公募要領7(9))。
- 中古品:金額にかかわらず、2者以上の中古品販売事業者から同等品の見積が必要です。取れなければ対象外で、理由書による随意契約での購入も認められません(Q3-28、公募要領7(9))。
- 区分経理:補助事業の経費は、他の経理と明確に区分して帳簿に記録します(交付規程第11条)。
- 写真:機械装置等は納品前後(据付前後)の写真を撮り、補助対象物件に「第20回持続化」の表示をします。
見積書等の「一式」「諸経費」といった内訳不明の表記は認められない場合があります(Q3-25)。
計画を変えたい・やめたいとき
補助事業の内容や経費の配分を変えるときは、原則として事前に「変更承認申請書(様式第4)」を出して承認を受けます(交付規程第12条)。ただし、各配分額の20%以内の流用増減は承認の対象外とされています。計画にない新しい費目の追加は原則として認められず、申請時に経費明細表へ計上していない「業務効率化(生産性向上)の取組」の経費も、後から加えられません。
事業を中止・廃止するときは事前に「中止(廃止)申請書(様式第5)」で承認を受けます。期間内に完了できない見込みのときは、速やかに「事故報告書(様式第6)」を出して指示を受けます。
実績報告から入金まで
補助金は金額が確定した後に支払われる精算払いです(交付規程第20条)。事務局は実績報告書を審査し、必要に応じて現地調査を行ったうえで、交付決定の内容に適合すると認めたときに金額を確定し、通知します(第19条)。そのあと、事業者が請求書(様式第9)を出します。振込先口座の通帳の写しなどが必要です。
そのため、経費は事業者がいったん全額を支払う必要があります。計算例(仮定)です。通常枠で税抜75万円の補助対象経費が全額認められ、補助率2/3、補助上限50万円の範囲に収まるとすると、補助金は50万円、自己負担は25万円です。ただし、入金されるまでの間は、取引先への支払額(消費税等を含む)を全額用意しておく必要があります。手元に残る金額は、補助金の手残り額シミュレーターで試算できます。
実績報告時に要件を満たしていないと判断されると、交付決定通知書の金額より減る場合があり、交付決定が取り消されることもあります。交付規程第23条は、規程違反、補助金の目的外使用、不正・怠慢、事業を実施期限までに完了しなかった場合、実績報告の期限を守らなかった場合などを取消事由に挙げています。これらの取消しで返還を命じられるときは、補助金の受領日から納付日までの期間に応じて、年利10.95%の加算金もあわせて命じられます(第23条第3項)。
補助金を受け取った後も続く決まり
- 書類の保存:帳簿と証拠書類は、補助事業の完了日の属する年度の終了後5年間、閲覧に応じられるよう保存します(第11条)。会計検査院等の実地検査が入る可能性も示されています。
- 財産の処分制限:取得価格または効用の増加価格が単価50万円(税抜き)以上の機械・器具・備品等は処分制限財産です(第25条)。公募要領では、外注で作成した自社ウェブサイトや、店舗改装による不動産の効用増加も例として挙げられています(公募要領10(8))。補助金を受け取った後でも、目的外使用・譲渡・担保提供・廃棄などは、事前に「取得財産の処分承認申請書(様式第12)」で承認を受けなければなりません。承認の際に、補助金の一部または全部に相当する額の納付を求められることがあります。制限期間は耐用年数に関する省令に従います。
- 管理台帳:取得財産等は「取得財産等管理台帳(様式第11-1)」で管理し、事業実施期間内に取得したものがあれば、実績報告書に「管理明細表(様式第11-2)」を付けます(第24条)。
- 収益納付:事業実施期間内に事業化などで収益が生じたと認められると、補助金の全部または一部に相当する額の納付を求められることがあります(第27条)。
- 消費税の仕入控除税額:事業完了後の申告で確定したときは、様式第10で報告し、返還を命じられる場合があります(第21条)。
- 事業効果等状況報告:原則として、事業実施期間終了日の属する月の翌月から1年間を「事業効果等状況報告期間」とし、その期間が終わった日の翌日から30日以内に、様式第14で報告します(第29条)。賃金引上げ特例・卒業加点・賃上げ加点で申請し補助金を受けた場合は、賃金引上げ等の状況もあわせて報告します。未提出の場合や、提出から1年が経っていない場合は、補助金の申請に制限がかかります(公募要領10(11))。
補助金は、融資と違い原則として返済は要りませんが、法人税・所得税の課税対象となる収益です(公募要領10(12))。補助金の位置づけは補助金と助成金の違いの記事も参考にしてください。申請前後の支援については補助金申請支援のページに案内があります。
よくある質問
採択通知が届きました。すぐに機械を発注してもよいですか。
よくありません。発注・契約・支出は、交付決定通知書に書かれた交付決定日から可能で、それより前の分は補助対象外です。採択結果の発表日や採択通知書の日付は、事業を始められる日ではないとされています。
展示会の出展申込みは、交付決定前でも問題ないですか。
公募要領は、展示会等への出展の申込みに限り、交付決定前でも補助対象になるとしています。ただし、請求書の発行が交付決定日以後でなければ対象外です。他の発注には当てはまりません。
事業は早く終わりましたが、実績報告はいつまでに出しますか。
補助対象経費の支払まで終えた日から30日を経過した日と、第20回の提出期限である2028年4月10日のいずれか早い日までです。賃金引上げ特例等を選んでいる場合は、2028年3月31日より前には提出できません。
代表者の個人クレジットカードで支払うと、対象になりませんか。
公募要領では、個人カードでの支払いは「立替払い」とされ、帳簿等で確認できない場合は対象外です。クレジット払いは申請事業者名義で、引き落としも補助事業期間内に終わっている必要があります。
補助金で買った機器を、数年後に売却できますか。
単価50万円(税抜き)以上のもの(機械装置等のほか、外注で作った自社ウェブサイトや店舗改装による不動産の効用増加なども含まれます)は処分が制限される期間があり、期間内の売却や貸付けは事前に事務局へ申請して承認を得る必要があります。収入がある場合は、その全部または一部の納付を求められることがあります(Q8-1)。
確認した一次資料
- 商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局:事務局サイト
- 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版、2026年7月21日)
- 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>交付規程(2025年4月25日制定、2026年3月6日改定、商工会議所地区)
- 第20回「申請時によくあるご質問」(事務局サイト掲載の版、2026年11月4日に確認)
- 中小機構 J-Net21 補助金・助成金:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>(第20回公募)
最終確認日: 2026年11月4日
本記事は、公的機関の一次資料を確認した範囲で書いています。確認日以降に資料が改定されている可能性があります。個別の申請可否や経費の扱いは、事務局・商工会議所や専門家にご確認ください。
計算の考え方と出典の扱いについては「数字の扱い方」をご覧ください。
