新事業進出補助金に採択された後は、原則として採択発表日から2か月以内に交付申請、交付決定後は14か月以内(ただし採択発表日から16か月後の日まで)に事業を完了、完了日から30日を経過した日か補助事業完了期限日の早い方までに実績報告という順で進みます。補助金が支払われるのは、額が確定した後です(交付規程第19条)。
この記事が前提にしている資料と公募回
確認したのは、中小機構の「中小企業新事業進出促進補助金 交付規程」(令和8年6月15日改正版)、事務局の「補助事業の手引き」(2026年8月17日 第1.8版)、「公募要領(第2回)」(第1.1版・令和7年11月)です。
手引きは、賃上げ要件などの返還要件について「公募回ごとに要件が異なる」ため、採択または交付決定を受けた公募回の要件を確認するよう求めています(手引き4-4)。第2回以外の回(第1回を含む)で採択された方は、ご自身の回の公募要領と交付決定通知書で、期限や条件が同じか確認してください。期限の日付そのものは、交付決定通知書の「補助事業完了期限日」が基準になります(手引き3-4)。
採択から入金までの流れ
- オンライン説明会に参加する:参加が確認できないと採択は自動的に無効になります(手引き3-1)。
- 交付申請:原則として採択発表日から2か月以内(手引き2-3・3-2-1、公募要領9(2))。申請書は様式第1です(交付規程第6条)。
- 交付決定:申請が届いてから通常要する標準的な期間は30日(交付規程第9条第2項)。
- 補助事業の実施:交付決定日から14か月以内。発注・納入・検収・支払をこの期間内に終えます(交付規程第5条、手引き2-2)。
- 実績報告:完了日から30日を経過した日または補助事業完了期限日のいずれか早い日まで(交付規程第17条第1項)。
- 確定検査・補助金の額の確定:書類審査と、原則として現地での調査(交付規程上は「必要に応じて」)を経て、補助金確定通知書(様式第8)が届きます(交付規程第18条、手引き4-3-2)。
- 精算払請求:確定通知書の受領後に請求し、書類に不備がなければ指定口座に振り込まれます(交付規程第19条、手引き3-5)。
- 事業化状況報告:補助事業の完了日の属する年度の終了後を初回として、以降5年間(交付規程第25条)。
| 段階 | 期限・時期(資料にある数字) | 根拠 |
|---|---|---|
| 交付申請 | 原則として採択発表日から2か月以内。なければ採択取消 | 手引き2-3、3-2、4-5 |
| 交付決定の通知 | 標準的な期間は30日 | 交付規程第9条 |
| 補助事業実施期間 | 交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月後の日まで) | 交付規程第5条 |
| 実績報告 | 完了日から30日を経過した日または完了期限日の早い方 | 交付規程第17条 |
| 事業化状況報告 | 完了年度の終了後を初回に5年間(手引きは通常計6回) | 交付規程第25条、手引き3-6 |
各段階の要点
交付申請と交付決定
交付申請とは、補助金の交付決定を受けるために採択後に行う申請手続きです(手引き3-2-1)。経費明細表、見積依頼書、見積書などを添えて、電子申請システムから提出します。
手引きによると、交付決定額は採択時の補助金申請額を上回れず、応募時に計上していない経費を交付申請で新たに加えることもできません。減額の結果、補助金額が下限額の750万円を下回ると採択取消です(手引き2-3)。
契約先の選定(相見積もり)の扱いは交付規程第13条に定めがあり、詳しくは変更申請の記事をご覧ください。
補助事業の実施
実施期間は、交付決定日から14か月以内ですが、採択発表日から16か月後の日を超えられません。そのため、交付決定が遅い人ほど実質の期間は短くなります。計算例(仮定):採択発表の3か月後に交付決定を受けた場合、14か月後は採択の17か月後にあたるため、16か月後の日までの約13か月が上限になります。
期間延長は原則認められず、例外は異常気象や火災・地震など補助事業者の責任によらない事由に限られます(交付規程第5条第2項、第15条)。詳しくは変更申請の記事をご覧ください。
支払いは原則として銀行振込の実績で確認されます。分割払いの場合、一部でも期間内に終わらない支払いがあると、その契約に含まれる経費はすべて対象外です(公募要領9、手引き2-2)。また、取得年月日は納品日ではなく検収年月日です(手引き4-1)。
実績報告から確定検査まで
補助事業の「完了」は、建物や設備の導入が終わっただけでは足りません。応募時に電子申請システムへ入力した「スケジュール」の内容がすべて完了していることを指します(手引き3-4-1)。期限までに実績報告書(様式第6)を出さないと、交付決定が取り消されます(交付規程第22条第1項第9号、手引き3-4-1)。やむを得ない理由がある場合に期限を猶予できる規定もありますが(交付規程第17条第3項)、認めるかどうかは中小機構の判断です。
実績報告には、補助事業に係る全ての経理証拠書類の写しを添えます。設備等を取得した場合は取得財産等管理明細表(様式第7)も添付します(交付規程第23条第3項)。さらに、取得した建物・設備を対象に、補助率以上の付保割合を満たし、自然災害(風水害を含む)を補償する保険または共済に、少なくとも事業計画期間の終了まで加入し、その加入を示す書類を実績報告書と一緒に提出します(交付規程第17条第2項、手引き4-1)。
計画を変えたいとき
経費区分ごとの配分額の変更(各配分額の10%以内の流用増減を除く)、単価50万円(税抜)以上の物品・役務の変更、事業の中止・廃止などは、事前に承認を受ける必要があります(交付規程第12条)。承認のない経費や事後申請は対象外です(手引き3-3-1)。なお、交付決定後の補助事業実施場所の変更は原則として認められません(手引き2-2、公募要領9(3))。手続きの詳細は「新事業進出補助金の変更申請」にまとめています。
交付決定前に発注・契約してはいけない
手引きは「交付決定日以降、補助事業を開始することができます。交付決定日より前に発注、契約、購入、支払い等を行った経費は補助の対象外となります」としています(手引き3-2-1)。公募要領にも同趣旨の「事前着手の禁止」があります。計画変更をした場合は、補助事業計画変更承認日以降の契約(発注)が条件になります(手引き2-2)。
証拠書類の保存期間
帳簿と全ての証拠書類は、他の経理と区分して備え、保存します。保存期間は、交付規程第11条第2項では、補助事業の完了日が属する補助事業者の決算年度の終了後5年間です。実績報告の証拠書類については第17条第4項が「当該報告に係る年度の終了後5年間」とし、手引き・公募要領は「補助金を受給した年度の終了後5年間」と書いています。
表現が資料ごとに少し異なるため、起算の年度が遅くなる方に合わせて保存するのが安全です。取得した財産(処分制限財産を除く)の管理も、完了日の属する年度の終了後5年間です(手引き4-2)。
事業化状況報告の期間と回数
補助事業の完了日の属する年度の終了後を初回として、以降5年間、様式第13の事業化状況・知的財産権報告書を提出します(交付規程第25条)。手引きはこれを「通常計6回」と説明しています(手引き3-6-1)。
提出書類は、損益計算書、貸借対照表、賃金台帳などです(手引き3-6-1)。報告をしなかった場合は交付決定の取消事由になります(交付規程第22条第1項第10号)。
補助金の返還が生じる典型
- 賃上げ要件などの未達:公募要領(第2回)の賃上げ要件では、一人当たり給与支給総額と給与支給総額の目標値を両方とも達成できなかった場合に、補助金交付額に達成度合いの高い方の未達成率を乗じた額が返還額になります(成長率がゼロ以下なら全額)。返還額は交付された補助金額が上限です(公募要領5-1(3))。事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準でない場合も返還の対象で、公募要領では補助金交付額を事業計画期間の年数で除した額です(5-1(4)、交付規程第27条)。
- 交付決定の取消し:補助事業の期限内に完了しなかった場合、実績報告書を期限内に出さなかった場合、事業化状況報告をしなかった場合などです(交付規程第22条)。交付済みの補助金は返還を命じられ、原則として年利10.95%の加算金も加わります。
- 確定額を超える交付:額の確定時に既に超える補助金が交付されていれば、超過分の返還を命じられます。返還期限は命令の日から20日以内で、期限を過ぎると年利10.95%の延滞金です(交付規程第18条)。
- 消費税等仕入控除税額:消費税の申告で控除税額が確定した後に様式第10で報告し、その分の返還を命じられることがあります(交付規程第21条)。
- 財産の処分:処分制限財産(単価50万円(税抜)以上)を処分制限期間内に処分するには事前承認が必要です。承認を受けた場合でも、残存簿価相当額や譲渡額などで算出した額を、補助金額を限度に納付します。事前承認なく処分した場合は、交付決定取消となる場合があります(交付規程第24条、手引き3-6-2)。
賃上げ要件の返還には、付加価値額が増加しておらず事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合に免除される規定もあります(交付規程第27条)。ただし、要件や計算式は公募回で異なるため、自社の回の公募要領を確認してください。
入金は後払い:資金繰りで気をつけること
交付規程第19条は、補助金は額を確定した後に支払うとしています。ただし「必要があると認められる経費」には概算払ができるとも書かれています。つまり原則は後払いで、事業にかかる費用は、いったん自社で全額支払う前提で計画する必要があります。今回確認した手引き・公募要領には、請求から入金までの日数の記載は見つかりませんでした。
計算例(仮定):補助対象経費が税抜2,000万円、補助率1/2で上限額の範囲内なら、補助金は1,000万円です。一方、支払うのは消費税込みの金額(税率10%と仮定すると2,200万円)で、補助金が入るのは実績報告・確定検査・精算払請求を経た後です。
- 借入金の支払利息や遅延損害金は補助対象外の経費です(手引き2-4)。
- 期間内の完了に必要な資金は、発注前に手当てしておきます。
- 応募時に金融機関要件で「金融機関による確認書」を出している場合、資金提供元の金融機関が変わったときは、社名等変更届出に確認書を添付します(手引き3-2-2)。交付決定債権を金融機関に譲渡して資金を調達する場合は、事務局に相談するよう手引きが案内しています(手引き4-6、交付規程第14条)。
よくある質問
交付申請の2か月以内に間に合わなかった場合はどうなりますか。
手引きと公募要領は、期限までに交付申請がない場合は採択取消になるとしています。見積書の取得など交付申請の準備は採択発表後すぐに始めるよう案内されています(手引き3-2、4-5)。
交付決定前に、見積書の取得や業者との打合せをしてもよいですか。
対象外になるのは、交付決定日より前の「発注、契約、購入、支払い等」です。見積書の取得は交付申請の必須書類で、問題ありません。迷う場合は事務局に確認してください。
事業化状況報告を忘れた場合はどうなりますか。
報告をしなかった場合は、交付決定の取消事由です(交付規程第22条第1項第10号)。取消しになると、交付済みの補助金の返還を命じられ、原則として年利10.95%の加算金も加わります(同条第2項、第3項)。
支払いの時期と入金の時期のずれは、月ごとの資金繰り表に落とすと見えやすくなります。資金繰り予測シミュレーターで試算できます。
確認した一次資料
- 中小企業新事業進出促進補助金 交付規程(令和7年4月21日制定、令和8年6月15日施行の改正版):事務局サイト掲載のPDF
- 中小企業新事業進出補助金 補助事業の手引き(2026年8月17日 第1.8版、中小企業新事業進出補助金事務局):事務局サイト掲載のPDF(事務局ホームページ)
- 中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)第1.1版(令和7年11月)
最終確認日: 2026年11月4日
本記事は公的機関の一次資料を確認した範囲で書いています。確認日以降に資料が改定されている可能性があります。個別の申請可否は、事務局や専門家にご確認ください。
計算の考え方と出典の扱いについては「数字の扱い方」をご覧ください。

