早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業。中小企業庁の案内では「Vアップ事業」とも表記)の伴走支援は、「原則1年間」ではありません。現行の手引き(令和8年3月31日改訂)では、計画策定後最初の決算時から3年間、決算期を含め年最低2回の実施が必須です。伴走支援費用の支払申請をしない場合も、実施と協議会への報告は必須とされています。
本記事は、中小企業庁の「経営改善計画策定支援事業(早期経営改善計画策定支援)に関する手引き」(令和8年3月31日改訂。以下「手引き」)と、「マニュアル・FAQ(金融機関を除く認定支援機関用)Ver8.1」(同日付。以下「マニュアル」)を確認し、伴走支援の回数・期間・報告の考え方を整理したものです。金融機関が認定支援機関として支援する案件には、別の「金融機関用」マニュアル・FAQが適用され、費用の扱いなどが異なる場合があります。
伴走支援の基本ルール
伴走支援とは、策定した早期経営改善計画が計画どおりに進んでいるかを、あらかじめ計画した時期ごとに確認し、事業者が金融機関に報告する準備などを行う支援です(マニュアルQ6-2)。手引き4(8)①は、次のとおり定めています。
- 期間は、計画策定後最初の決算時から3年間。
- 回数は、期中(決算期・中間決算期)を通じて、決算期を含め年最低2回。
- 実施状況は金融機関と共有し、計画策定支援の費用支払申請書(別紙②)に記載した報告予定日までに、伴走支援レポートと「《伴走支援》実務指針に基づく実施確認表」を提出して協議会に報告する。
- 申請者の責めに帰すべき事由で伴走支援が行えない特段の事情(倒産等)がない限り、3年間の実施は必須。
マニュアルQ6-1も、計画策定後3カ年の伴走支援を義務化しており、期間中は特段の事情がない限り、少なくとも年2回(中間決算期、決算期)実施して協議会に報告する必要があるとしています。実施および報告を行わない場合、協議会が費用負担した金額の返還等を求められることがあります(Q6-1、Q2-14)。
「計画策定後最初の決算」(0期)の意味
マニュアルQ6-7では、金融機関に早期経営改善計画書を提出した日(金融機関の受取書等の日付)を起算日とし、計画提出後の最初の決算期を「0期」としています。0期以降の3年間の決算(1〜3期分)が伴走支援の対象で、提出日以降の最初の中間決算期、または決算期から開始します。0期の決算時点の伴走支援も必須です(Q6-7(2)、設例の図)。
つまり「3年間」は、計画を作った日から数える3年ではなく、0期の決算日を起点に、1期・2期・3期と進む期間です。伴走支援の対象期間の最終日は、計画策定後3年を経過した最初の決算日です(Q6-8)。
回数の計算例:3月決算で10月31日に計画を提出した場合
以下は仮定に基づく計算例です。3月決算の会社が2026年10月31日に計画書を金融機関へ提出したと仮定します。マニュアルQ6-7の設例②(決算月3月末・策定10/31)と同じ並びで、提出後の最初の決算期である2027年3月31日が0期になります。
| 回 | 基準日 | 区分 | 期 | 報告の目安(極力4か月以内) | 報告の最大(6か月以内) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2027年3月31日 | 決算 | 0期 | 2027年7月31日 | 2027年9月30日 |
| 2 | 2027年9月30日 | 中間 | 1期 | 2028年1月31日 | 2028年3月31日 |
| 3 | 2028年3月31日 | 決算 | 1期 | 2028年7月31日 | 2028年9月30日 |
| 4 | 2028年9月30日 | 中間 | 2期 | 2029年1月31日 | 2029年3月31日 |
| 5 | 2029年3月31日 | 決算 | 2期 | 2029年7月31日 | 2029年9月30日 |
| 6 | 2029年9月30日 | 中間 | 3期 | 2030年1月31日 | 2030年3月31日 |
| 7 | 2030年3月31日 | 決算 | 3期 | 2030年7月31日 | 2030年9月30日 |
この場合の必須回数は合計7回(中間期3回・決算期4回)です。右2列は、後述の報告期限(基準日から極力4か月以内、遅くとも6か月以内)を基準日に当てはめた計算結果です。
同じ3月決算でも、計画の提出が5月31日だと並びが変わります。マニュアルの設例①では、提出後の最初の中間決算期(9月30日)から数えるため、0期にも中間決算期が入り、図の上では決算4回・中間決算4回の計8回になります。提出日と決算月によって回数が変わるため、実際の日程は、計画書に記載する伴走支援計画で確認してください。
なお、0期の期中(例:12月31日時点)に任意の伴走支援を加えることもできます。時期は事業者・認定支援機関・関係金融機関の間で決められます(Q6-7(2))。任意で加えた回を計画書や見積にどう書くかは、利用申請先の協議会に確認してください。
伴走支援で何をするか
マニュアルQ6-2によると、進捗の確認方法は決算期と中間決算期で異なります。
- 決算期は、決算書等をもとに確認する。
- 中間決算期は、試算表等をもとに確認する。試算表がなければ、事業ごとの売上実績等の資料で確認する。
- アクションプランの進捗を確認し、計画と実績に乖離があれば、原因の分析と助言を行い、計画の見直しとPDCAサイクルの構築を支援する。
実務指針の「伴走支援の実務と着眼点」は、(1)進捗確認、(2)取組状況の確認、(3)対応策の検討と事業者へのアドバイス、(4)報告支援、(5)計画の見直しとPDCAサイクルの構築、の5つです。計画の実行を助ける助言・指導も伴走支援に含まれます。
協議会への報告:書類・期限・提出時期
報告は毎回必要です。マニュアルQ6-3では、計画策定支援の費用支払申請時に提出した伴走支援の実施予定に基づき、各実施報告日までに、次の3点を協議会へ提出するとしています。
- 伴走支援実施報告書
- 伴走支援レポート(金融機関への報告に使った書面の写し、または報告内容を記録した書面)
- 《伴走支援》実務指針に基づく実施確認表
期限の考え方は、伴走支援の対象となる基準日(決算日等)から極力4か月以内、遅くとも6か月以内に行うこととされています(Q6-3)。この報告は、伴走支援費用の支払申請と同時に行うこともできます。伴走支援の実施状況(支援件数に対する伴走支援件数等)は公表されます(Q6-3)。
伴走支援費用の支払申請そのものの有効期限は、伴走支援対象期間の最終日から6か月を経過した日です。この期限までに申請書を提出できないと、利用申請は失効します(手引き4(9)②、Q6-8)。ただし、期限までに提出できないことに明確な理由があり、協議会が認める場合は、有効期限を延長できるとされています(手引き4(9)②ただし書き)。支払申請は、伴走支援を実施して事業者が自己負担分を支払っていれば随時でき、その都度の申請も可能です(Q6-4)。
伴走支援の料金を設定せず、支払申請額を0円とする場合も、協議会への報告は必要です。この場合は、押印不要の支払申請書、伴走支援報告書(参考書式)、自己記入チェックリスト、実施確認表、伴走支援レポートを提出します(Q6-3、Q6-5)。
協議会ごとに、提出方法や日程の組み方について別途指示がある場合があります。実際の運用は、利用申請先の協議会に確認してください。
費用の「1/2留保」は廃止されています
以前は、計画策定支援費用の支払決定額の1/2を、伴走支援が実施されるまで協議会が留保する制度がありました。マニュアル第2(4)によると、この制度は廃止されており、2025年4月1日以降(同日を含む)に計画策定支援費用の支払申請が行われた案件では、1/2留保は行われません。ただし、留保がなくなっても、伴走支援の実施と報告は必須です。費用の上限や自己負担額は早期経営改善計画の補助額と自己負担額をご覧ください。
実施上の注意
- 外部委託はできません。伴走支援は認定経営革新等支援機関が自ら実施します(手引き4(4)、マニュアル第2(5))。
- 計画と実績の乖離が大きい場合で、経営改善や抜本的な事業再生が必要なときは、申請者に相談のうえ協議会と協議し、経営改善計画策定支援事業(通常枠・中小版GL枠。中小企業庁の案内では「405事業」)または協議会のプレ再生・再生支援の利用を条件に、伴走支援を終了できます(手引き4(8)②)。
- 着手できない場合は、申請者の法的整理や、再三の要請にもかかわらず資料提供に応じてもらえないなど、支援機関の責めに帰さない事由があり、協議会への申請によって理由が合理的と判断された場合は、例外的に中断できることがあります(Q6-9)。
- 伴走支援のみの利用は対象外です(Q1-6)。ただし、すでに策定した計画がある場合でも、達成度合い等から計画を修正し、あわせて伴走支援を行う場合は対象になるとされています(同)。
申請から支払までの書類の流れは早期経営改善計画の申請の流れと必要書類で、制度の全体像は早期経営改善計画の策定支援で整理しています。
よくある質問
伴走支援費用を請求しない場合も、伴走支援は必要ですか。
必要です。手引き4(8)①は、支払申請がない場合も伴走支援の実施は必須としています。協議会への報告も必要で、その場合の提出書類はマニュアルQ6-5に記載があります。
中間決算がない会社でも年2回が必要ですか。
手引きは「決算期を含め年最低2回」、マニュアルは「少なくとも年2回(中間決算期、決算期)」としています。中間決算期は、試算表がなければ事業ごとの売上実績等の資料で確認する扱いです(Q6-2)。中間決算を行っていない場合の基準日の置き方は、計画書の伴走支援計画の作り方とあわせて、協議会に確認してください。
報告が遅れそうな場合はどうなりますか。
報告は、基準日から極力4か月以内、遅くとも6か月以内に行うこととされています(Q6-3)。支払申請の有効期限は別に、対象期間の最終日から6か月を経過した日で、明確な理由があり協議会が認める場合に限り延長できます(手引き4(9)②)。遅れが見込まれる段階で、協議会に相談してください。
計画どおりに進まず、実績との乖離が大きいときは。
認定支援機関が適切な助言を行い、乖離が大きく経営改善や抜本的な事業再生が必要な場合は、申請者に相談のうえ協議会と協議し、405事業やプレ再生・再生支援の利用を条件に伴走支援を終了できます(手引き4(8)②)。自己判断で終了することはできません。
確認した一次資料
- 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」に掲載の「経営改善計画策定支援事業(早期経営改善計画策定支援)に関する手引き」(令和8年3月31日改訂)
- 同ページ掲載の「経営改善計画策定支援事業(早期経営改善計画策定支援)〈バリューアップ支援事業〉マニュアル・FAQ【金融機関を除く認定経営革新等支援機関用】」Ver8.1(令和8年3月31日)
- 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援(Vアップ事業)及び経営改善計画策定支援(405事業)の手引き・FAQ等を改定等します」(「Vアップ事業」「405事業」の表記の確認用)
最終確認日: 2026年11月4日
本記事は公的機関の一次資料を確認した範囲で書いています。確認日以降に資料が改定されている可能性があります。個別の申請可否は、事務局・協議会や専門家にご確認ください。
計算の考え方と出典の扱いについては「数字の扱い方」をご覧ください。

