早期経営改善計画の費用と補助上限|自己負担の計算例

早期経営改善計画の費用と補助上限|自己負担の計算例 経営コラム

早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業。中小企業庁の案内では「Vアップ事業」とも表記)で協議会が支払うのは、計画策定支援費用と伴走支援費用の3分の2で、上限は計画策定が50万円、伴走支援が30万円(合計80万円)です。金額は消費税込みで数え、上限や利用申請時の見積額を超えた部分は補助(協議会からの支払)の対象になりません。なお、以前あった「計画策定支援費用の支払決定額の1/2を、伴走支援が実施されるまで協議会に留保する制度」は、2025年4月1日以降に支払申請が行われた案件では行われません。

この記事は、中小企業庁の「経営改善計画策定支援事業(早期経営改善計画策定支援)に関する手引き」(令和8年3月31日改訂)と、中小企業庁・中小企業基盤整備機構の「マニュアル・FAQ【金融機関を除く認定経営革新等支援機関用】Ver.8.1」(令和8年3月31日)に基づいて、費用の仕組みを整理したものです。

補助額の決まり方:3分の2と費用ごとの上限

手引き「3.支払費用」では、中小企業活性化協議会からの支払の対象となる費用を「費用のうち3分の2を上限とする」とし、費用の種類ごとに上限を定めています。対象は、認定経営革新等支援機関が協議会からの業務の委嘱を承諾した日以降に発生した費用です。マニュアル第1(PDF p.8)にも「計画策定支援費用及びその後の伴走支援費用の2/3(上限額80万円まで)」とあります。

費用の種類補助の上限備考
計画策定支援費用50万円費用の3分の2と上限50万円のうち小さい方
伴走支援費用30万円費用の3分の2と上限30万円のうち小さい方
企業概要書作成費用10万円を加算(任意)費用の2/3、上限10万円。事業承継先の探索に係るもので、事業承継・引継ぎ支援センターへの相談が条件(Q7-2)
金融機関交渉費用10万円を加算(任意)費用の2/3、上限10万円。経営者保証の解除に向けた交渉に限る(手引き3・Q8-3)

計画策定と伴走支援を合わせた上限が80万円で、企業概要書作成費用と金融機関交渉費用は、それぞれ別に上限10万円を加算できる仕組みです。マニュアルQ1-1(PDF p.14)には、対象となる費用は「全て消費税込み」とあります。

上限額は改訂されることがあり、マニュアルVer.8.1(令和8年3月31日)の改訂内容にも「支援上限の見直し」が挙がっています。ただし、見直し前の金額や経過措置は、手引き・マニュアルからは読み取れません。これから利用申請する場合は、現行の手引き(令和8年3月31日改訂)の金額を確認してください。改訂前に受理された申請の扱いは、協議会に確認してください。

自己負担の計算例(金額はすべて仮定です)

次の例は、仕組みを理解するための仮定の計算です。実際の金額は、利用申請時の見積額と、協議会の支払決定によって変わります。金額は消費税込みの総額とし、補助の対象外となる部分も事業者が支払う前提で、自己負担に含めています。

例費用総額補助額自己負担
例1計画策定75万円・伴走支援45万円(計120万円)50万円+30万円=80万円40万円
例2計画策定90万円・伴走支援50万円(計140万円)50万円+30万円=80万円60万円
例3計画策定60万円・伴走支援24万円(計84万円)40万円+16万円=56万円28万円
  • 例1:75万円の3分の2は50万円(上限と同額)、45万円の3分の2は30万円(上限と同額)です。補助は合計80万円、自己負担は120万円−80万円=40万円です。
  • 例2:90万円の3分の2は60万円ですが、上限が50万円なので補助は50万円です。50万円の3分の2は約33.3万円ですが、上限が30万円なので補助は30万円です。上限を超えた部分は補助されません。
  • 例3:上限に届かない場合は、費用の3分の2がそのまま補助額になります。

マニュアルQ5-5(PDF p.30)にも、同じ考え方の例が載っています。計画策定費用75万円なら補助50万円(自己負担25万円)、伴走支援費用33万円なら補助22万円(自己負担11万円)です。

補助が入ったあとの実質的な負担額を、他の補助金と並べて考えたいときは、補助金の手残り額シミュレーターも使えます。

見積額を超えた分と、見積の書き方で気をつけること

手引き「3.支払費用」には、利用申請時に提出する費用総額(予定)を超えた費用は支払の対象にならないと書かれています。マニュアルQ5-5は、計画策定の費用が見積を下回って総額に余りが出ても、伴走支援として区分した見積額を超えた分は対象にならない、と回答しています。協議会の支払は、利用申請時の見積額(計画策定費用・伴走支援費用それぞれ)が上限です(マニュアル第2(4)・(5))。

  • 利用申請には「業務別見積明細書(別紙①-2)」と、認定経営革新等支援機関の見積書・単価表(自由書式)を添えます(Q2-2、PDF p.19)。
  • 補助対象は、認定経営革新等支援機関が行う業務で、単価表に基づく「時間×単価」で示せ、利用申請時の見積りに示されているものです(Q1-1注1、PDF p.14)。単価表は、機関が使っている時間あたりの単価表でかまいません(Q2-9)。
  • 従来から対価を得ずに行っている業務は、支払の対象になりません(手引き「3」)。
  • 宿泊費・旅費は対象ですが、日当は対象外です。上限50万円は、宿泊費・旅費と計画策定支援費用を合算して判定します(Q5-10、PDF p.32)。

伴走支援の見積の内訳は、協議会によって、中間期・決算期ごとの回数と時間の形で書くよう求められることがあります。見積を作る前に、提出先の協議会の運用を確認してください。

お金の流れ:誰が誰に払うのか

事業者が現金で補助を受け取る形ではありません。手引きとマニュアルでは、次の流れになっています。

  1. 事業者が、申請者の費用負担額(手引きの様式では費用の3分の1と表記)を、認定経営革新等支援機関に振込で支払います。手引き「5」は支払方法を金融機関による振込としており、マニュアルQ5-2では「口座振替」は認められません。
  2. 事業者と認定経営革新等支援機関が連名で、協議会に支払申請書類を出します。自己負担分の支払を示す証憑(振込受付書など)が添付書類です。
  3. 協議会が内容を確認し、支払決定額・支払予定日を認定経営革新等支援機関に通知して、費用の3分の2(利用申請時の見積額と、費用の種類ごとの上限の範囲内)を支払います(マニュアル第2(4)、PDF p.12)。

支払先は認定経営革新等支援機関です。事業者は先に自己負担分を支払い、補助の部分は協議会から認定経営革新等支援機関へ支払われる、という整理になります。なお、費用が上限を超える場合に、超過分をどう支払い、どう証憑を付けるかは、資料に明記がありません。協議会に確認してください。

自己負担分の支払い方にも決まりがあります。

  • 支払は、認定経営革新等支援機関が業務の委嘱を承諾した日以降に行います。振込手数料は経費に含めません(手引き「5」)。
  • 顧問料や決算料など、本事業とは別の契約に基づく料金での精算は認められません。本事業の費用と特定できる形で支払います(手引き「5」、Q2-10)。
  • 本事業以外の費用と合算した振込は認められず、振込金額は「申請者の費用負担額」と一致している必要があります(Q5-3、PDF p.30)。
  • 計画策定費用と伴走支援費用を合算した一括の前払いは不可です。費用ごとの前払いと分割払いは認められます(Q5-4)。
  • 源泉所得税が引かれた額を振り込んだ場合も、費用負担額は源泉所得税控除前の総額です(Q5-12、PDF p.32)。

支払申請の時期と書類

支払申請は、計画策定支援費用と伴走支援費用で分かれています。

計画策定支援費用伴走支援費用
申請の時期早期経営改善計画を金融機関に提出し、受取書等を受け取った後伴走支援を実施し、自己負担分を支払い、書類が整った都度(毎月の申請も可)
主な書類費用支払申請書(別紙②)、早期経営改善計画、業務別請求明細書、従事時間管理表、《計画策定支援》実務指針に基づく実施確認表伴走支援費用支払申請書(別紙③)、伴走支援報告書、業務別請求明細書、従事時間管理表、《伴走支援》実務指針に基づく実施確認表
主な添付書類請求書類(協議会宛・原本)、契約書の写し、自己負担分の支払を示す証憑の写し、金融機関の受取書等の写し契約書の写し、請求書類(協議会宛・原本)、自己負担分の支払を示す証憑の写し、伴走支援レポート等
期限利用申請の受理日から1年を経過した日までに支払申請書の提出がなければ失効伴走支援対象期間の最終日から6か月を経過した日までに提出がなければ失効

根拠は、手引き4(2)②・(7)・(9)と、マニュアルQ5-1(PDF p.29)、Q6-4・Q6-5・Q6-8(PDF p.35〜37)です。伴走支援の期限は、提出がないことに明確な理由があり、協議会が認める場合は延長できます(手引き4(9)②)。

計画策定の段階の書類の流れは早期経営改善計画の申請の流れと必要書類で、3年間の伴走支援の回数と日付は早期経営改善計画の伴走支援の回数と期間で整理しています。

支払決定額の1/2留保は廃止されています

以前は、計画策定支援費用の支払決定額の1/2を、伴走支援が実施されるまで協議会に留保する制度がありました。マニュアル第2(4)(PDF p.12)は、この制度を「伴走支援の適切な実施が定着してきた」ことから廃止したとし、2025年4月1日以降(同日を含む)に支払申請が行われた案件では、1/2留保は行われないと書いています。古い解説で「支払の半分は伴走支援が終わるまで留保される」と読んだ場合は、2025年4月1日以降の支払申請には当てはまりません。

一方、伴走支援の実施と協議会への報告は、費用の支払申請をするかどうかにかかわらず必須です(手引き4(8)①)。計画策定後最初の決算時から3年間、決算期を含めて年に最低2回で、申請者の責めに帰すべき事由で行えない特段の事情(倒産等)がない限り求められます。伴走支援費用は、伴走支援の実施後に支払申請します(Q6-4)。

実施・報告を行わない場合、協議会が費用負担した金額の返還等を行うこととなる場合があります(マニュアルQ6-1・Q2-14)。ただし、申請者の法的整理や、再三の要請にも申請者が資料提供等に応じないなど、申請者の責めに帰すべき事由により伴走支援が行えない特段の事情がある場合は除かれます(Q2-14)。

グループ会社と複数の認定支援機関の場合

グループ会社は、例外的な場合を除き、利用申請がグループ全体で1件となり、上限額(合計80万円)もグループ全体で適用されます(Q1-7、PDF p.18)。複数の認定経営革新等支援機関が共同で支援することもできますが、1事業者あたりの補助金額の上限は変わりません(Q2-11)。

制度の全体像と当社の支援内容は、早期経営改善計画の策定支援(横浜)のページに掲載しています。

よくある質問

上限を超える見積でも利用できますか。

協議会の支払の対象になるのは、費用の3分の2で、かつ計画策定支援は50万円、伴走支援は30万円までです。上限を超える部分は、協議会の費用負担の対象になりません(手引き「3」、Q5-5)。見積額が上限を超える場合の利用申請の扱いは、資料に明記がないため、協議会に確認してください。

伴走支援費用の支払申請は、3年後にまとめて行うのですか。

まとめる必要はありません。マニュアルQ6-4は、伴走支援を実施し、自己負担分を支払い、書類が整えば、その都度申請でき、毎月の申請も可能と回答しています。ただし、伴走支援対象期間の最終日から6か月を経過した日までに申請書が提出されないと、利用申請は失効します(Q6-8)。

顧問料や決算料の中に含めて支払ってもよいですか。

認められません。手引き「5」とQ2-10は、本事業の費用と特定できる形で支払うことを求めています。顧問税理士が関与する場合は、別に業務委託契約を結ぶ必要があります。

業務の委嘱を承諾する前に発生した費用も対象になりますか。

対象になりません。手引き「3」は、認定経営革新等支援機関が業務の委嘱を承諾した日以降に発生した費用を対象とし、手引き「5」は、自己負担分の支払もその日以降に行うこととしています。

確認した一次資料

最終確認日: 2026年11月4日

本記事は公的機関の一次資料を確認した範囲で書いています。確認日以降に資料が改定されている可能性があります。個別の申請可否や補助額は、事務局・協議会や専門家にご確認ください。計算例は仮定であり、補助の受給を保証するものではありません。

計算の考え方と出典の扱いについては「数字の扱い方」をご覧ください。