「在庫を持ち続けるコストは、在庫金額の年20〜30%」。在庫圧縮を勧める記事でよく引かれる数字です。売れ残り在庫の処分判断ツールを作るにあたり、この数字の出典を探しました。結論として、この水準を示した日本の公的機関の資料は確認できませんでした。
どこを調べたか
中小機構(J-Net21・経営自己診断システム)、中小企業庁、経済産業省(ローカルベンチマーク含む)を確認しましたが、「在庫金額の年◯%」という水準の記載はありませんでした。この数値は海外(主に米国)のロジスティクス文献に由来する経験則で、海外の文献自体が「一般に受け入れられた算定手法は存在しない」としています。
数字は無いが、費目の考え方は公的資料にある
一方で、在庫を持つことで生じる費用の構成要素は、中小機構 J-Net21に定性的な記述があります。保管にかかる費用、資金の金利負担、陳腐化・劣化による価値の低下などです。つまり「率」を借りてくるのではなく、自社の実態から費目を積み上げるのが、根拠を説明できる唯一の方法です。
なお誤解が多い点として、棚卸資産(商品・製品・原材料)そのものに固定資産税はかかりません。償却資産に当たらないためです(地方税法341条4号)。保管費に含めるべきは、自社所有の倉庫や保管設備にかかる固定資産税です。
実務でどう使うか
売れ残った在庫の判断は「値引きして売る」「廃棄する」「持ち続ける」の3択の比較です。年20〜30%という借り物の率で持ち続けるコストを見積もると、判断そのものが借り物になります。保管費・金利・陳腐化を自社の数字で積み上げれば、3択の損得は具体的な金額で比較できます。
この積み上げと3択の比較は、滞留在庫コスト計算シミュレーター(無料)で行えます。
確認した一次資料
最終確認日: 2026年8月12日
本記事は、公的機関の一次資料を実際に開いて確認した範囲で書いています。確認日以降に資料が改定されている可能性があります。個別の融資判断・税務判断は、取引金融機関や税理士等の専門家にご相談ください。
計算の考え方と出典の扱いについては「数字の扱い方」をご覧ください。

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