「運転資金は月商3ヶ月分」はどこから来たのか

経営コラム

「運転資金は月商の3ヶ月分を確保しておくのが目安」。資金繰りの話で必ず出てくるこの数字の出典を、公的資料で探しました。結論として、経常運転資金の水準を「月商の何ヶ月分」で示した公的機関の資料は確認できませんでした。

近い記述はある。ただし別物

中小機構 J-Net21「運転資金の考え方」には「開業時点では、この運転資金の項目で必要な金額の2〜3ヶ月分があると安心です」という記述があります。一見すると通説の裏付けに見えますが、これは開業時に手元へ置く資金の話で、基準も月商ではなく月々の費用です。経常運転資金の水準の目安ではありません。

また、中小機構「経営自己診断システム」の借入金月商倍率(指標No.21)は「業界平均値と比べて特に大きいかどうか」で見る相対評価の指標として設計されており、「何ヶ月分なら安全」という絶対的な目安は示されていません。

必要な運転資金は、商売の形で決まる

経常運転資金は「売上債権+棚卸資産−仕入債務」で決まります。つまり回収サイト・支払サイト・在庫日数という自社の商売の形次第です。現金商売の飲食店なら運転資金はほとんど要らず、手形回収の卸売業なら月商3ヶ月分を超えることも珍しくありません。同じ「月商3ヶ月分」でも、業種が違えば意味がまったく変わります。

回転日数の算式は公的資料に実在します。売上債権回転日数=(受取手形+売掛金+受取手形割引高)÷(売上高÷365)、棚卸資産回転日数=棚卸資産÷(売上高÷365)(いずれも中小機構「経営自己診断システム」指標解説より)。

実務でどう使うか

「月商の何ヶ月分あるか」は説明の道具としては便利ですが、判定基準としては使えません。自社の経常運転資金を実額で計算し、売上が伸びたときに追加でいくら必要になるか(増加運転資金)まで見るのが実務的です。

決算書の数字から経常運転資金・増加運転資金・回転日数を計算するには、運転資金シミュレーター(無料)をご利用ください。

確認した一次資料

最終確認日: 2026年8月13日

本記事は、公的機関の一次資料を実際に開いて確認した範囲で書いています。確認日以降に資料が改定されている可能性があります。個別の融資判断・税務判断は、取引金融機関や税理士等の専門家にご相談ください。

計算の考え方と出典の扱いについては「数字の扱い方」をご覧ください。

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